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「うっわ。めっずらしー」
工藤家に訪問した彼の第一声。
「るせー」
言われた本人は愛らしい顔を激しくしかめ、にらみつけた。
「だってコナンちゃん。このものすっげぇ素敵台所が活用される日が来るなんて俺思わなかったんだって」
呼ばれてきてみればなんと江戸川コナンが台所でエプロンをして立っているではないか。
これを驚愕しないでなにに驚けというのだ?
彼と知り合ってまだそんなに立っていないが、たまに工藤家に帰ってくるコナンに付き合ってこちらのお宅にお邪魔することは結構あったりした。
いつか・・・いつか・・あの全く活用されていない、素晴らしい機能を搭載した台所で楽しく料理してやるっっっ(高校生男子の野望として間違っている)と心に強く強く決めていたのだが。
「何が起こったのーーーー」
「バツゲームだ。ああ、そうだとも灰原のヤツにはめられた俺を笑うがいいさっっっ」
ムンクの叫び状態の快斗にコナンはふんぞり返ってやけっぱちに笑ってみせた。
「で、俺を呼んだのは何故?」
「・・・・・」
いきなり電話が来たのだ。
コナンから電話が来るなんて天変地異の前触れ!?と思いつつもウキウキでて見れば
『今から30分以内に俺の家に来い』
それだけ行ってブツっと音信不通。
聞き返そうと電話をかけても通じない・・・。
よく解らないが特に用事のなかった快斗はとりあえず速攻この場へやってきた。
理由を問うのは当然である。
「何か不都合があったんでしょ?それで俺の協力が必要。違う?」
「・・・違わねぇ」
やっぱりね。
ってなもんだ。
「ほらさっさと言っちゃったほうが楽だよ」
「・・・・とりあえず、鍋を取ってくれ」
「は?」
憮然とした表情で上を指差すコナンに快斗は指の先を見る。
なるほど、収納棚。
上にあるタイプ。それは確かにイス程度ではうまく届かないであろう。
ではではと程よい高さにある棚を開いて中の収納部分をグッと手前に引けばガッションととり易いように手前に引き出される。
もしこれをコナンが取ろうとしたらそれはそれは大惨事になったことだろう。
諦めて俺を呼んでくれてよかったー。
「はい鍋。この大きいのでいいの?」
「ああ。それからあの皿もとってくれ」
「はいはい」
「それからそこの木べらと」
「はいはい」
「それからこれに水いれて、こっちに動かしてくれ」
「はいはい」
なんだかんだで・・・・
「出来たかー?」
「うんそろそろ~・・って何で俺がカレー作ってんの?」
「あ?俺はただ混ぜるのを頼んだだけだぜ」
確かに危ないから、と引き受けたのは自分。
その前に材料を切るコナンのあまりの危なっかしさに思わず手を出したのも自分。
あれ?
もしかして俺が全部作った?
無意識にコントロールされていたとしか思えないこの状況。
そう、となりで作成されているサラダ用のゆで卵だって俺が水いれて卵とってきて中に放りいれてさらにタイマーもかけた・・俺じゃん。俺が作ってるじゃん。
頼まれるままに冷蔵庫からレタスとかきゅうりとか取り出して手渡して見せればこれまた危なっかしげに水洗い。このままでは千切れたレタスがすべて流れて海の仲間入りしそうだった。
「もーー俺がやるからっ」
奪いとりましたともっっ。
「いやー手伝いありがとな快斗」
にこやかに。とっても朗らかにコナンにはありえないお言葉をくださっが・・・。
(手伝い?手伝いなの今の?)
激しい疑問が胸の中でうずまく。
果たしてコナンは何をしたのか。
コナンは言うだろう。
俺の全開の力で料理をしようとしていたら快斗が横から手伝ってくれただけだと。
彼の不器用は筋金入り。
でも、彼なりに頑張った結果であり、確かに作ろうとした意志もある。
なんだかむしょーに嵌められた気がしてたまらない快斗だが
「灰原~出来たぜ。元太達つれてこっちこいよ」
ご機嫌な声で隣へ電話をする可愛い可愛い少年を見て
(ま、いっかー)
などと思ってしまうのでしたとさ。
なんだいつもの事じゃんってカンジ(笑)
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